呼吸器の解剖生理④~神経とリンパ~

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呼吸器の解剖生理も今回で第4弾!解剖学分野は今回で終了です。

次回より、ガス交換や酸塩基平衡などの生理学分野に入ります。

今回は呼吸器を制御する神経系やリンパについて書いていこうと思います。

神経系の細かいことについては脳神経分野で詳しく書こうと思っているので今回は必要最低限の呼吸器に関わる神経系のことについて書きます。

リンパに関してはパパの仕事分野から的外れな部分なのであまり詳しく書けませんのであらかじめご了承ください。

呼吸を制御する神経系

呼吸を制御している中枢は延髄にあります。

(いろんなところからの情報をもらい、各所に指示を出す司令塔です)

呼吸の調節は、刺激の種類などで大きく3つに分けられます

  • 行動性調節
  • 化学的調節
  • 神経性調節

1つずつ少し詳しく見ていきます

【Fig.1】

行動性調節

3つの調節のうち、唯一の随意的な調節です。

刺激となる物は、発声や会話、情動、興奮などがあります。

関与する受容体・神経と流れ

  1. 大脳皮質や視床下部から命令をへ伝える
  2. 橋は大脳皮質や視床下部からの命令を延髄に伝える
  3. 命令を受けた延髄は、頸髄や胸髄に命令を伝える
  4. 命令を受けた頸髄や胸髄は各筋肉を支配する運動ニューロン(横隔神経や肋間神経)を介して命令を伝える
  5. 命令を受けた呼吸筋(外・内肋間筋、横隔膜など)が収縮や弛緩を行う

呼吸は本来無意識に行われているが、例えば海などで潜るときに息を大きく吸って止めることを意識して呼吸をコントロールすることができますよね。

これは大脳皮質から「これから海に潜るから息を大きく吸って止めて!」という命令が延髄に伝えられることにより起こります。

このように意識的に呼吸をコントールすることを行動性調節と呼びます。

化学的調節

不随意的な調節です。

刺激となる物は、体内のCO2増加、O2減少、pH低下など

関与する受容体・神経と流れ

  1. 化学受容体がCO2の増加、O2の減少、pHの低下などを感知
  2. 化学受容体がそのことを延髄に伝える
  3. 連絡を受けた延髄が頸髄や胸髄に命令を伝える
  4. 命令を受けた頸髄や胸髄は各筋肉を支配する運動ニューロン(横隔神経や肋間神経)を介して命令を伝える
  5. 命令を受けた呼吸筋(外・内肋間筋、横隔膜など)が収縮や弛緩を行う

化学受容体は2種類に分類されます。

1つは中枢化学受容野といい、延髄腹側の表層に存在CO2の増加やpHの低下を監視しています。

もう一つは末梢化学受容体といい、総頚動脈が内頚動脈と外頚動脈に分岐する部分に存在する頸動脈小体大動脈弓に存在する大動脈小体の2つがある。

末梢化学受容体は、主にO2の低下の監視を行っています。

(多少はCO2やpHの変化も感知していますが主はO2の低下を見ています)

【Fig.2】

補足事項

中枢化学受容野は、動脈血中のCO2に反応しているのではなく、髄液中に入ったCO2が産生するH+の上昇を感知しているのではないかと考えられているそうです。

ちなみに普段は中枢化学受容野がメインとなって働いています。

(末梢化学受容野がさぼっているわけではなく監視は行っています)

日常生活での呼吸促進は体内のCO2上昇が関与している。

少し運動しただけでも呼吸が早くなるのはCO2に敏感な中枢化学受容野がCO2の上昇を感知し呼吸促進しているのです。

運動することによって体中の組織(細胞)からCO2が排出されますからね。

では、末梢化学受容体が命令を出すときってどんなとき?って思った方もいると思います。

ではどんな時に末梢化学受容体から命令が出るか考えてみましょう。

末梢化学受容体は主にO2の低下を監視しています。動脈血中のO2が低下するのはどのような時でしょうか。

呼吸不全など肺でのガス交換が上手くできないときってO2はどうなりますか?低下しますよね

このように高度O2低下時になると末梢化学受容体がこれを感知して呼吸促進の命令を出します。

末梢化学受容体が反応するということは生命を脅かすくらいヤバい事態ということになります。

と、言っても今末梢化学受容体が命令を出して呼吸が早くなったのかなどは確認することができませんけどね。

神経性調節

不随意的な運動です。

刺激となるものは下気道や肺の伸展などです。

関与する受容体・神経と流れ

  1. 肺の膨張を伸展受容体が感知
  2. 伸展受容体がそのことを延髄に伝える
  3. 連絡を受けた延髄が頸髄や胸髄に命令を伝える
  4. 命令を受けた頸髄や胸髄は各筋肉を支配する運動ニューロン(横隔神経や肋間神経)を介して命令を伝える
  5. 命令を受けた呼吸筋(外・内肋間筋、横隔膜など)が弛緩し吸息を抑制する

気道壁の伸展変化によって吸息を抑制し呼息へ切り替えようとする反射をHering-Breuer反射(ヘーリング ブロイヤー)と呼ばれる。

この反射は1回換気量が増大した時、肺の過膨張による損傷を防ぐための反射である。

気道の自律神経調節

気道には自律神経の受容体が分布しており、交感神経、副交感神経の両方の作用を受けている。

補足事項

『随意的』、『不随意的』とはなにか

学生の方や医療スタッフであればご存じかと思いますが簡単に説明します。

意識して動かすことを随意的

意識しなくても勝手に動かしていることを不随意的

例として

コップを持つから手を動かす

コップを持つという意思に基づいて手を動かしているので随意的な運動である。

寝ていても呼吸していますよね

意識しなくても呼吸しているのでこれは不随意的な運動である。

リンパ

肺の中のリンパは末端から肺門に向かって流れている。

リンパ管の合流地点にはリンパ節がある。

肺リンパの流れ

主気管支より末端の肺リンパ節から主気管支付近の気管リンパ節へ集まり、縦郭リンパを経て静脈角(内経静脈と鎖骨下静脈合流部分)に注がれる。

肺門に集まるリンパの流れには大きく2種類ある。

  1. 肺内のリンパ管系
    小葉間結合組織内にリンパ管網を張り巡らせ、血管や気管支に沿って肺門に至る
  2. 胸膜のリンパ管系
    臓側胸膜の表面にリンパ管網を張り巡らせ、胸膜面に沿って肺門に至る

※胸膜のリンパ管系が肺内のリンパ管系にと合流して肺門に至る場合もある。

縦隔リンパ節

両肺に挟まれ、気管、食道、心臓、大血管などが位置する空間を縦隔と呼ぶ。

そこにあるリンパ節を総称して縦隔リンパ節と呼ぶ

実は縦隔リンパ節は細かく分けると部位ごとに11個のリンパ節に分けられる。

【Fig.3】

①:上縦隔上部リンパ節 ②:気管傍リンパ節
③:気管前リンパ節 3a:前縦隔リンパ節
3p:気管後リンパ節 ④:気管気管支リンパ節
⑤:大動脈下リンパ節 ⑥:大動脈傍リンパ節
⑦:気管分岐部リンパ節 ⑧:食道傍リンパ節
⑨肺靱帯リンパ節