血液ガスの読み方!- 呼吸の評価 –

記事内に広告を含みます

血液ガスの読み方!- 呼吸の評価 –

血液ガスデータから呼吸の異常を読み取る方法を解説

この記事はで読むことができます。


 血液ガス分析の評価方法(呼吸の評価)

酸素化の評価

SaO₂、PaO₂、P/F比で酸素化の評価をする。

A-aDO₂でガス交換障害の評価をする。

酸素運搬能の評価

Hb、Hb分画を確認し酸素を運搬するHb量の評価をする。

CaO₂の評価する。

酸素需要と供給のバランスの評価

Lacで嫌気性代謝の有無、循環不全の評価する。

DO₂、VO₂、O₂ERで需要と供給のバランスを評価する。

換気の評価

PaCO₂で換気ができているかを評価する。

必要最低限評価できるようになってほしい項目には黄色マーカーを引いています。


 酸素化の評価

PaO₂:動脈血酸素分圧

PaO₂は動脈血中に溶けている酸素の量を示している。

加齢に伴い正常値も変化する。 PaO₂=100-(0.3×年齢)

基準値80~100mmHg

SaO₂:動脈血酸素飽和度

酸素化Hbの割合を示している。

基準値96~98%

P/F比

適応FiO₂かでの酸素化の指標となる。

計算式P/F比=PaO₂÷FiO₂

P/F比が300以下で肺に何らかの障害がある。

A-aDO₂:肺胞気動脈血酸素分圧較差

理想的な肺胞気(100mmHg)と動脈血の酸素分圧の差のこと。

低酸素血症の原因となるガス交換障害を評価するための指標となる。

計算式A-aDO₂={(713×FiO₂)-(PaCO₂×0.8)}-PaO₂

基準値≦10mmHg(境界値:10~20mmHg、異常値:≧20mmHg)
年齢によって基準値も上がる。(A-aDO₂≦年齢×0.3)

A-aDO₂開大の原因

・拡散障害
・シャント
・換気血流比不均衡
・肺胞低換気

呼吸不全(基本は低酸素血症)

Ⅰ型呼吸不全

診断基準PaO₂≦60mmHg、PaCO₂=正常

原因拡散障害、換気血流比不均衡、シャント

Ⅱ型呼吸不全

診断基準PaO₂≦60mmHg、PaCO₂≧45mmHg

原因肺胞低換気
肺胞換気量が低下するため、PaCO₂が溜まる。

拡散障害とは

肺胞から血液への酸素運搬に障害がある状態。

CO₂はO₂の20倍拡散しやすいため、拡散障害が生じても体内に蓄積しにくい。

代表疾患間質性肺炎、COPD、肺水腫、ARDS

シャントとは

肺胞でガス交換が行われていない血液が動脈系に戻っている状態。

シャントは、「肺毛細血管シャント」と「解剖学的シャント」がある。

肺毛細血管シャント:肺血流はあるが、肺胞に含気がない状態。
解剖学的シャント:身体の構造上の問題。

代表疾患
肺に起因するもの:肺動脈奇形(PAVM)、ARDS
心臓に起因するもの:卵円孔開存(PFO)、心房中隔欠損症(ASD)、心室中隔欠損症(VSD)

換気血流比不均衡とは

換気量と血流量のバランスが崩れた状態。

肺血流不足(V>Q)では、酸素投与の効果は弱く、換気量不足(V<Q)では、酸素投与で酸素化の改善が見込める。

代表疾患
V>Qの場合:間質性肺炎、肺水腫、ARDS、PAVM、無気肺
V<Qの場合:COPD、肺血栓塞栓症

肺胞低換気とは

ガス交換に必要な肺胞換気量が保てない状態。

代表疾患オピオイド過剰、肥満低換気症候群、喘息重責発作、COPD急性増悪


 酸素運搬能の評価

Hb:ヘモグロビン

Hbは酸素と結合して運搬する。

Hbが少ないと高濃度酸素を投与しても運搬できない。

基準値男性 13.1~16.3g/dL、女性 12.1~14.5g/dL

Hb分画

酸素と結合し運搬できるHbをO₂Hb(酸素化ヘモグロビン)と呼び、酸素と結合できないHbをHHb(脱酸素化ヘモグロビン)と呼ぶ。

HHbにはCO(一酸化炭素)と結合したCO-Hb(カルボキシヘモグロビン)と窒素酸化物や硝酸態窒素に暴露してO₂と結合できないMet-Hb(メトヘモグロビン)がある。

CO-Hbが増加してもSpO₂は高く表示されるが酸素運搬能は低下している状態。

CaO₂:動脈血酸素含有量

動脈血中に含まれるすべての酸素量を合計した値。

動脈血中に含まれる酸素量の約98%はHbと結合した状態、残りの約2%は溶存している状態。

計算式CaO₂=(1.34×Hb×SpO₂)+(0.003×PaO₂)

基準値男性 18.8~22.3mL/dL、女性 15.8~19.9mL/dL

CaO₂を上げる因子はHbとSaO₂で特に重要なのはHbである。
PaO₂を上げてもCaO₂はほとんど上がらない。


 酸素需要と供給のバランスの評価

Lac:乳酸

酸素需要に対する供給量を評価する指標(Lacだけの評価は禁

酸素が不足すると嫌気性代謝によりLacが増加する。

基準値2mmol/L

Lacの上昇があっても一概に肺が原因とは言えず、ショックとの鑑別が必要となる。

ショックの分類

血液分布異常性ショック
敗血症性ショック、アナフィラキシー、中毒(薬物、毒物、輸血、重金属)、副腎クリーゼ

心原性ショック
心筋症、心筋梗塞、弁膜症、重症不整脈、心筋炎 など

血液量減少性ショック
出血、脱水

心外閉塞拘束性ショック
緊張性気胸、肺塞栓、心タンポナーデ

DO₂:酸素供給量

1分間に全身組織へ運ばれる酸素の量。

計算式DO₂=CO×{(1.34×Hb×SpO₂)+(0.003×PaO₂)} [mL/min]
適正DO₂は、VO₂に見合うDO₂が維持できること。

VO₂:酸素消費量

1分間に消費される酸素の量。

計算式VO₂=CO×(CaO₂-CvO₂)=CO×Hb×1.34×(SaO₂-SvO₂)

基準値230mL/min

O₂ER:酸素摂取率

供給される酸素量がどの程度の割合で消費されているか。

計算式O₂ER=VO₂÷DO₂×100

基準値20~30%


 換気の評価

PaCO₂:動脈血二酸化炭素分圧

換気ができているかを示す指標。

換気の評価だけでなく、酸塩基平衡の指標にも使われる。

基準値35~45mmHg