腎臓の解剖生理【解剖】

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今回より腎・泌尿器の解剖生理に突入します。

まず、はじめにお詫びということで、カテゴリーが『腎・泌尿器』となっていますが、実際には腎臓と膀胱までの尿路に関しての解剖生理しか行いません。

泌尿器の分野となると、例え医学のこととは言え、一個人の名も知れていないブログのため、表現がアウトになる可能性を考慮して膀胱以下の尿路に関する解剖生理は当ブログでは扱わない方針とさせていただきます。

今後、いろいろ調べて大丈夫そうであれば、順次膀胱以下の尿路も解説していこうかなと検討しています。

では、『腎臓の解剖生理』スタートです!

参考書籍

僕が勉強の参考にしている書籍の一部を紹介しています

腎臓の構造

成人の腎臓は、長さ約10cm、幅約5cm、重さ約100gのそら豆のような形をした臓器です。

第12胸椎(Th12)~第3腰椎(L3)の高さに左右に1つずつ計2個存在する。

右の腎臓(右腎)は肝臓の真下にあるため、左の腎臓(左腎)よりもおよそ2~3cm低い位置に存在する。

腎臓、尿管は後腹膜腔に存在しており、後腹膜臓器(腹膜後器官)として分類され、膀胱は腹膜下腔に存在しており、腹膜下器官として分類される。

腎臓は、線維被膜と腎臓、副腎を取り囲む脂肪被膜、Gerota(ジェロタ)筋膜でおおわれている。

補足説明

腹膜後器官には腎臓の他にも、十二指腸、膵臓、下行結腸、腹部大動脈、下大静脈、上行結腸、直腸、尿管、副腎が含まれる

腎臓の縦断面では、腎皮質と腎髄質に区分される

腎皮質には腎小体が存在している。

1つの腎臓に尿細管と集合管の集合からなる錐体形の線条部が10~20個ある。これを腎錐体という。

生成された尿は、腎錐体先端の腎乳頭から腎杯に排出され、腎盂に集められ、尿管へと流入する。

【Fig.1】

腎柱、②腎乳頭、③小腎杯、④大腎杯、⑤腎盂

副腎の役割

副腎は、両腎の上方に位置し、ステロイドやカテコラミンを分泌する内分泌器官である。

腎とついているが腎臓とは役割の違う別物である。

皮質の球状層から分泌されるアルドステロンは、集合管でのNa再吸収を促進させるホルモンである。

詳しくは別のカテゴリーで説明するが、皮質の球状層からアルドステロン、束状層からコルチゾール、網状層からアンドロゲンのステロイドホルモンを分泌し、髄質からはノルアドレナリンアドレナリンのカテコラミンを分泌する。

【Fig.2】

腎区域

腹部大動脈から分岐した腎動脈は5本の区域動脈に分岐する。

区域動脈の支配領域は隣接するし肺動脈との血管吻合がない(終動脈

区域動脈の支配領域は腎区域として分類される。

腎区域の名称

腎区域の名称には泌尿器科学的名称と解剖学的名称の2つが存在している。

注意

泌尿器科学的名称と解剖学的名称の対応する名称を『=』で結びます。 泌尿器科学=解剖学 のように表記します。

①:尖区=上区

②:上区=上前区

③:中区=下前区

④:低区=下区

⑤:後区=後区

【Fig.3】

腎臓の血管

腹部大動脈から腎動脈(①)が分岐する。

腎動脈は通常5本の区域動脈(②)に分岐して腎門から腎臓内に入る。

区域動脈は腎錐体の間を走行する葉間動脈(③)、その後皮質・髄質間を走行する弓状動脈(④)となる。

弓状動脈から皮質に向かう小葉間動脈(⑤)が分岐する。

皮質内に入った動脈は、輸入細動脈(⑥)を経て毛細血管からなる糸球体を形成する。

その後、輸出細動脈(⑦a)を経て再び毛細血管となり、今度は尿細管周辺を走行する。

皮質の毛細血管は小葉間静脈(⑧a)を経て弓状静脈(⑨)となる。

皮質と髄質の境界付近の傍髄質糸球体からの血管は直細動脈(⑦b)、尿細管周辺毛細血管、直細静脈(⑧b)を経て弓状静脈へ注がれる。

弓状静脈となった後は、葉間静脈(⑩)、区域静脈(⑪)、腎静脈(⑫)を経て下大静脈へ流入する。

【Fig.5】

【Fig.6】

ネフロンとは

ネフロンとは、腎臓における尿生成の機能単位のことをいう。

原尿を生成する腎小体(糸球体、ボウマン嚢)と原尿の成分を調節する尿細管で構成されている。

片方の腎臓には約100万個のネフロンが存在するため、通常の場合左右合わせて約200万個のネフロンが存在することになる。

ネフロンは、皮質に存在する皮質ネフロン、髄質付近に存在する傍髄質ネフロンがある。

割合的には皮質ネフロンが全体の約80%、傍髄質ネフロンが約20%の割合で存在している。

皮質ネフロンの尿細管周辺の毛細血管は原尿の成分の再吸収と分泌のための血液供給の役割を担っている。

傍髄質ネフロンの直血管は濃縮尿生成のための対向流交感系の機能を担っている。

集合管は発生学的起源がネフロンとことなる点からネフロンには含まれない別物となっている。

【Fig.7】

腎小体の構成

腎小体は直径約200μmの球体で、糸球体とボウマン嚢で構成される。

【Fig.8】

糸球体は毛細血管が係蹄構造(ループ構造)となったもので糸玉状の構造を形成する。

糸球体の構成

  • 糸球体上皮細胞
  • 糸球体上皮細胞の足突起
  • 毛細血管
  • 血管内皮細胞
  • 糸球体基底膜
  • メサンギウム細胞

血管内皮細胞、糸球体基底膜、糸球体上皮細胞の3層から構成されている糸球体係蹄壁は、糸球体の濾過膜としての役割を担っており、糸球体毛細血管内を通過する血液を濾過し、原尿を生成している。

メサンギウム領域は毛細血管の埋めるようにして毛細血管を支持している。

【Fig.9】

【Fig.10】

血管内皮細胞

有窓の内皮細胞

内径70~100nmの多数の孔(窓)が開いておりこれより大きいな物質(血球など)は通さない

陰性荷電のため、陰性荷電物質を通しにくい

糸球体基底膜

糸球体の透過性を左右する構造物

3~4nmの小孔があいており、小分子の身を通過させる

血管内皮細胞と同様、陰性荷電のため陰性荷電物質を通しにくい

糸球体上皮細胞

足突起を伸ばし、糸球体基底膜の周囲を取り巻く

足突起間は濾過スリットと呼ばれ、20~40nmの感覚が開いており、足突起間同士はスリット膜でつながっている。

ボウマン嚢は扁平な上皮細胞からなり、糸球体を包む袋状の構造をしている。

袋状の内側の間隙をボウマン腔という。

ボウマン嚢の構成

  • ボウマン嚢上皮細胞
  • ボウマン嚢上皮細胞の基底膜
  • ボウマン腔

血液は輸入細動脈から流入し、糸球体を経て輸出細動脈から流出する。

血液は糸球体で濾過されたのち、ボウマン腔に入り、原尿として近位尿細管へと流入する。

傍糸球体装置(JGA:juxtaglomerular apparatus)とは、遠位尿細管と輸入細動脈、輸出細動脈の接触部位周辺に存在する細胞群のことである。

JGAは糸球体濾過量(GFR:glomerular filtration rate)や全身の血圧維持に関わっている。

【Fig.11】

緻密層(マクラデンサ)

遠位尿細管の一部で尿細管腔内のNaClの濃度を感知する。

傍糸球体細胞(顆粒細胞:JG cell)

輸入細動脈の壁に存在し、血圧の低下による血管壁の伸展性の低下を感知する。

レニンを合成・分泌する

糸球体外メサンギウム細胞

緻密層からのシグナルを中継する

血管平滑筋細胞

収縮・弛緩することで輸入・輸出細動脈の血管抵抗を変化させる。

尿細管の構造

尿細管は糸球体で濾過された原尿の通り道である。

尿細管は走行による区分と上皮細胞の構造による分類がある。

原尿は尿細管で物質の再吸収・分泌を受けたのち、集合管へ注がれて尿として腎杯に到達する。

尿細管の上皮細胞は分節ごとに構造や存在するする輸送体に特徴があり、尿調節における機能を分担している。

【Fig.12】

走行による分類は近位曲部、ヘンレループ、遠位曲部、集合管に分類され、走行・上皮細胞による分類は①~⑨に分類される。

尿路の解剖

尿管、膀胱、尿道で構成される。

尿の輸送、貯留、排泄の役割を担っている。

尿管の走行と構造

尿管は腎盂から膀胱までをつなぐ、長さ約25cm、口径約5mmの管である。

尿管には3つの生理的狭窄部があり、尿路結石ができやすい。

  • 腎盂尿細管移行部
  • 総腸骨動脈交叉部
  • 膀胱尿細管移行部

尿管は大腰筋の前を下降し、精巣動脈または卵巣動脈の後方を通り、総腸骨動脈の前を通って骨盤腔内に進入する。

その後は男女特有の器官または動脈と交差して膀胱底に至り、膀胱壁を斜めに貫いて尿管口に開口する。

膀胱壁を斜めに貫通していることによって膀胱からの尿の逆流を防いでいる。

【Fig.13】

膀胱の構造と役割

膀胱は尿を一時的に貯留するための伸縮性がある袋状の臓器であり、成人で約300~500mLの尿を貯留することができる。

膀胱の筋層は3層(内縦・中輪・外縦)の平滑筋で構成され、排尿筋として働いている。

内腔の粘膜は、伸展性のある移行上皮(尿路上皮)からなり、畜尿・排尿時の容積変化に応じて上皮層の厚みが変化する。

【Fig.14】

参考書籍

僕が勉強の参考にしている書籍の一部を紹介しています