「ペースメーカ」医療従事者なら1度は必ず聞いたことがあると思います。
今回はペースメーカの適応について日本循環器学会のガイドラインをもとに簡単にまとめたいと思います。
ペースメーカの適応
日本循環器学会ガイドラインより抜粋
房室ブロックにおけるペースメーカ植込みの適応
ClassⅠ
- 徐脈による明らかな臨床症状を有する第2度、高度、第3度房室ブロック
- 高度または第3度房室ブロックで以下のいずれかを伴う場合
①投与不可欠な薬剤によるもの
②改善の予測が不可能な術後房室ブロック
③房室接合部のカテーテルアブレーション後
④進行性の神経筋疾患に伴う房室ブロック
⑤覚醒時に著明な徐脈や長時間の心室停止を示すもの
ClassⅡa
- 症状のない第3度房室ブロック
- 症状のない第2度または高度房室ブロックで以下のいずれかを伴う場合
①ブロック部位がHis束内またはHis束下のもの
②徐脈による進行性の心拡大を伴うもの
③運動または硫酸アトロピン負荷で伝導が不変もしくは悪化するもの - 徐脈によると思われる症状があり、ほかに原因のない第1度房室ブロックで、ブロック部位がHis束内またはHis束下のもの
ClassⅡb
- 至適房室間隔設定により血行動態の改善が期待できる心不全を伴う第1度房室ブロック
パパ的解釈
臨床症状の有無が大事
基本的にはMobitzⅡ型第2度房室ブロック、高度房室ブロック、第3度房室ブロック(完全房室ブロック)ではほぼほぼペースメーカの適応となる。
しかし、第1度房室ブロックやWhenckebach型第2度房室ブロックでも臨床症状がある場合、ペースメーカの適応となる。
また、術後に房室ブロックを発症した際、それは可逆性なのか不可逆性なのか判断がつかないものや薬剤性の房室ブロックの場合、原因となる薬剤の投与を中止できるか否かでペースメーカの適応が決まる。
また、心不全の原因が徐脈によるもので至適心拍数によって血行動態の改善が期待でき心不全の回復につながる場合
第2度房室ブロックは2つに分けられる
- Whenckebach型第2度房室ブロック(MobitzⅠ型とも呼ばれる)
- MobitzⅡ型第2度房室ブロック
なぜ、同じ第2度房室ブロックなのにMobitzⅡ型は絶対適応でWhenckebach型は絶対適応ではないのか。
それは、同じ第2度房室ブロックでもこれら2つはブロック部位が違うため絶対適応かそうではないかに分かれます。
Whenckebach型は大多数がHis束より上でブロックされている(AHブロック)しかし、MobitzⅡ型はHis束以下でのブロック(HVブロック)であるため、ClassⅡaに該当するため絶対適当となります。
Whenckebach型は房室接合部調律により心拍数を維持できることもあり、絶対適応とはならない。
洞不全症候群におけるペースメーカ植込みの適応
ClassⅠ
- 失神、けいれん、眼前暗黒感、めまい、息切れ、易疲労感などの症状あるいは心不全があり、それが洞結節機能低下に基づく徐脈、洞房ブロック、洞停止あるいは運動時の心拍応答不全によるものであることが確認された場合
それが長期間の必要不可欠な薬剤投与による場合を含む
ClassⅡa
- 上記の症状があり、徐脈や心室停止を認めるが、両者の関連が明確でない場合
- 徐脈頻脈症候群で、頻脈に対して必要不可欠な薬剤により徐脈をきたす場合
ClassⅡb
- 症状のない洞房ブロックや洞停止
パパ的解釈
洞結節の機能低下によっておこる徐脈、洞房ブロック、洞停止によって失神、けいれん、眼前暗黒感、めまい、息切れ、易疲労感などの症状がある場合または、心不全を呈している状態
洞不全症候群:sick sinus syndrome [ SSS ]
洞結節あるいはその周囲の障害により、洞徐脈、洞房ブロック、洞停止が生じる症候群
Rubensteinの分類(ルーベンスタイン)
Ⅰ型:洞徐脈
Ⅱ型:洞房ブロック、洞停止
Ⅲ型:徐脈頻脈症候群
パパ的まとめ
ペースメーカの植込み適応疾患
- MobitzⅡ型第2度房室ブロック
- 第3度房室ブロック(完全房室ブロック)
- 洞不全症候群
心不全やAdams-Stokes発作(アダムス-ストーク)を伴う第1度房室ブロック、Whenckebach型第2度房室ブロック
ブロック部位がHis束内またはHis束下であると診断された場合
参考書籍
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